テヌート(Tenuto) とは、音符の上(または下)に横棒(―)が書かれた記号で、その音を十分に保って弾くという奏法を指します。
イタリア語で “tenere(保つ)” が語源で、短すぎず長すぎない、ちょうど音符本来の長さを意識して演奏するのが大きな特徴です。
- 語源:イタリア語で「保つ」
- 特徴:音符の長さをしっかりと保持して弾き、音のつながりやメロディを浮き立たせる効果がある
テヌートの記号・楽譜上の表記
楽譜に書かれるテヌート記号は、音符の上や下に引かれる短い横棒(―)として表されます。また、「ten.」 といった略記が添えられている場合もあります。
テヌートとアクセント(>)が同時に書かれている表記(例:_と>が重なった形)もあり、「しっかり音を保ちつつ強調する」ニュアンスを持つことがあります。
曲のジャンルや作曲者の意図によって解釈が微妙に変わる場合もあるため、状況に応じて注意深く読み取ることが大切です。
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音価を正確に把握する
テヌートは「音を本来の長さで十分に保つ」という意味をもちます。
まずはその音符の長さが何拍、どの程度の伸ばしを要求されているのかを明確に理解しましょう。拍子やテンポ、周囲のフレーズによって、テヌートの感じ方が変わることもあります。
鍵盤を押さえ続ける意識を持つ
通常の打鍵では「押してすぐに離す」イメージが強いかもしれませんが、テヌート記号がついている場合は「指を鍵盤に置いたまま、しっかり音を支える」感覚が重要です。
腕や手首の力みはなるべく減らし、指先で柔軟に鍵盤を感じ取りましょう。
メトロノームを使って長さを確認
テヌートを含む音符の長さが、本来の拍子からズレないように気をつけましょう。
特に、長く保ちすぎて次の音に遅れないよう、メトロノームのカウントを頼りに練習すると、テンポキープがしやすくなります。
中級~上級者向け:テヌートの表現力アップポイント
フレーズ全体の流れを意識する
テヌートは、単音だけでなく、メロディ全体に適用されるケースもあります。
メロディラインをしっかり保ち、フレーズごとの高まりを感じながら演奏すると、曲の流れがより豊かに表現できます。
強調したい音や和音をテヌートにすると、旋律が浮き出て聴こえる効果も期待できます。
音の強弱との組み合わせ
音をただ伸ばすだけでなく、クレッシェンドやデクレッシェンドなどと組み合わせると、音色に一層立体感を生み出せます。
テヌートで保っている間に少しずつ音量を変化させることで、聴き手を引き込むような表情豊かな演奏になります。
他の奏法との対比を活かす
スタッカートやスタッカーティッシモなどの短い音符が続く中で、テヌートの音をひとつだけ差し込むと、“ここだけ特別に長く保たれている”という強いコントラストが生まれます。
逆に、レガートやアーティキュレーションの流れの中にあっても、テヌートが指定されている音は特に意識して伸ばすことで、色彩の変化を生み出すことができます。
よくある質問(Q&A)
Q. テヌートとレガートはどう違いますか?
レガート(legato)は、音と音の間を切れ目なく滑らかにつなぐ奏法を指します。
一方、テヌートは「その音を十分に保つ」という指示で、必ずしも次の音とのつながりを意識するわけではありません。
レガートとテヌートが同時に指示される場合には、「その音を十分に保ちながら、さらに音と音をつなげる」ようなニュアンスになります。
Q. テヌートが付いている音は強く弾いたほうがいいのでしょうか?
テヌートは音を“長く保つ”ことを意図しており、必ずしも強く弾くことを指示しているわけではありません。
ただ、音を十分に保つために、やや押し方をはっきりさせたり、腕の重さを鍵盤に乗せ続けたりすることで結果として音が強調される場合があります。
曲の文脈やほかの記号(アクセントなど)との兼ね合いで判断しましょう。
Q. ピアノペダル(ダンパーペダル)で補うのはアリですか?
もちろん状況によりますが、テヌートをペダルだけに頼ってしまうと、音が濁ったり、テヌート本来の指先の保ち方が曖昧になったりするリスクがあります。
ペダルを使って響きを補いたい場合でも、指自体で音を支える感覚を忘れないようにしておくことが大切です。
まとめ
テヌート(Tenuto) は、ピアノ演奏において「その音を十分に保つ」という指示です。
通常の打鍵よりも音符の長さを意識して伸ばすため、メロディやフレーズを際立たせたり、音楽にじっくりとした深みを与えたりする効果があります。
初心者の方は音価を正確に把握し、メトロノームを活用しながら、しっかり指を鍵盤に乗せ続ける感覚を身につけましょう。
ぜひ今回のポイントを踏まえ、深みのある表現力を身につけてみてください。