音楽を始めようと思ったとき、「ピアノとエレクトーン、結局どちらを選べばいいの?」という疑問を持つ方も多いと思います。

両者はどちらも鍵盤楽器ですが、構造や演奏スタイル、費用、設置条件まで大きく異なります。

本記事では、三つの代表的な鍵盤楽器「アコースティックピアノ」「電子ピアノ」「エレクトーン」を比べながら、それぞれの特徴を順に解説します。

構造と機能の違い

ピアノとエレクトーンの構造と機能の違い

アコースティックピアノは88鍵の鍵盤で、ハンマーが弦を叩くことで音が鳴る純粋な打弦楽器です。

電子ピアノは、その仕組みを電子的に再現したもので、同じ88鍵ながら内部にはスピーカーと音源が組み込まれています。

エレクトーンだけは少し特殊で、上下2段の手鍵盤足用のペダル鍵盤が備わり、合計で100鍵以上を使いわけます。右手でメロディー、左手でコード、足でベースを担当できるため、一台で小さなオーケストラのような重厚感を味わえます。

項目アコースティックピアノ電子ピアノエレクトーン
鍵盤構成88鍵/1段88鍵/1段上49+下49+ペダル20=118鍵
基本サイズ(幅×奥行×高)149×53×113 cm136×42×85 cm123×57×102 cm
重さ約190 kg約10〜40 kg約100 kg
本体価格(新品目安)500,000 円〜20,000円〜700,000 円〜
維持費調律 年1回1〜2万円前後0円(調律不要)0円(調律不要)
消音練習×◎ヘッドホン可◎ヘッドホン可
得意ジャンルクラシック/表情豊かなソロ演奏ピアノ曲全般+録音・配信ポップス/映画/作曲

タッチと表現力の差

ピアノとエレクトーンのタッチと表現力の差

ピアノ(アコースティック、電子とも)は鍵盤を押すスピードや深さで音量や音色が変わります。繊細な指先のニュアンスがそのまま音になるので、クラシック曲の微妙な起伏には最適です。

エレクトーンにもタッチによる強弱検知機能があるタイプもありますが、基本的には鍵盤で鳴らす音量が一定で、足元のエクスプレッションペダルや音色設定で表情を作ります。

タッチの細やかさで勝負したいならピアノ、アレンジの幅を楽しみたいならエレクトーン、と覚えておくとよいでしょう。

アコースティック/電子ピアノ

アコースティック/電子ピアノ
  • 打弦方式:ハンマーが弦を叩く完全アコースティック(電子はサンプリング再生)。
  • タッチ表現:無段階で強弱が付くため、指先のコントロールが最もシビア

両手でメロディーと伴奏を分担しながら、広い鍵盤を縦横に移動して弾きます。鍵盤の横幅全体を使うため、跳躍やクロスなど、運指上の難所が多い点が特徴です。

タッチの強弱が無限に存在するため、表現の奥行きは深い反面、細部のコントロールには相応の訓練が欠かせません。

エレクトーン

エレクトーン

右手・左手・足が受け持つ役割がはっきり分かれているので、譜面上はやや楽に見えます。

一方で、音色切り替えやリズムスタートといったボタン操作が奏法に組み込まれているため、“鍵盤+機械操作” に慣れるまでが少し大変です。

  • 2段鍵盤+リズム機能:右手メロ/左手コード/足ベースで役割分担。
  • デジタル補助:自動伴奏・アフタータッチなどの機能も豊富。

費用を比較

価格だけを見ると電子ピアノが圧倒的に導入しやすく、調律も不要なので維持費がかかりません。

アップライトピアノは本体価格に加えて毎年の調律費用が乗るため、中長期的にはコストが膨らみがちです。

エレクトーンはタイプによっては、数年ごとにOSや音源のバージョンアップ費用が発生しますが、基本的には維持費用はあまりかかりません。

騒音・設置・搬入の注意点

ピアノとエレクトーンの騒音・設置・搬入の注意点

アップライトピアノは背板が壁に面しているため、音だけでなく低域振動が下階に伝わりやすいのが難点です。厚手のカーペットや防振マットを敷く、練習時間帯を夜19時までに制限するなどの配慮が必須になります。

電子ピアノエレクトーンはヘッドホン練習ができるので、音漏れリスクはかなり低くなります。ただしエレクトーンの足鍵盤は踏み込み時に床へコツコツと伝わるため、カーペットや防音シートでの防振対策を忘れないようにしましょう。

項目推奨対策
振動伝搬(床)厚手カーペット+防振マット(特にエレクトーン足鍵盤)
壁面反射楽器背面5 cm以上離す/吸音パネルで高域カット
搬入経路曲がり角 80 cm以上確保(アップライトは149 cm幅)
階下・隣室練習時間帯を19 時まで/ヘッドホン練習を併用

搬入については、アップライトピアノが最もシビアです。

幅1.5メートル弱、高さ1.1メートル前後の箱型を直角に曲げながら運び込むため、エレベーターや階段の幅、高さを事前に測っておく必要があります。

電子ピアノとエレクトーンはパーツが分解できる機種が多く、搬入経路で悩むケースはほとんどありません。

年齢別に育つスキル

ピアノとエレクトーンの年齢別に育つスキル

幼児期や小学生の場合、ピアノなら読譜力と集中力、エレクトーンならリズム感と即興演奏力が目に見えて伸びます。

大人が趣味で始める場合、感性が磨かれたりストレス解消の効果があります。

年齢ピアノで伸びやすい力エレクトーンで伸びやすい力スタートのコツ
幼児指先の巧緻性/絶対音感リズム感/和声感覚音あそび中心:鍵盤色分けシール+伴奏付きデータ
小学生読譜力/集中力アンサンブル力/即興検定や発表会で目標設定
中高生表現力/感情解放編曲・DTM基礎動画投稿やバンド活動と連動
大人ストレス解消/認知機能維持コード理論/アドリブ短期レッスン+オンライン教材

よくある質問 Q&A

ピアノ初心者によくある質問(Q&A)
QA
マンション2階でもアップライトは置ける?幅149 cmエレベータに入ればOK。階段吊り上げは別途2〜5万円。
ヘッドホン練習の遅延は?電子ピアノ/エレクトーンとも1 ms以下で体感なし。
エレクトーン→ピアノへ転向は難しい?左手・足がコード習得済みなので読譜を強化すれば半年で基礎移行可。
ピアノの防音室はいくら?組立式2畳タイプで80~120万円(中古40万~)。

まとめ

  • 指先のニュアンスで音そのものを磨きたい方 にはピアノが向いています。
  • 一人でバンド/オーケストラのような多彩なサウンドを楽しみたい方 にはエレクトーンが好相性です。

このページを参考に、ご自身の利用用途に合わせた楽器を探してみてください。