ピアノには様々な鍵盤数のタイプがあるので、初めてピアノを買う方はどの鍵盤数を選ぶべきか迷ってしまいますよね。
そこで今回は、ピアノの鍵盤数による違いや、鍵盤数の変化の歴史についてご紹介していこうと思います。
「鍵盤の数」の主要4タイプ
61鍵(5オクターブ) – 初心者向けエントリーモデル

61鍵はコンパクトさと手軽さが特徴です。
横幅はおよそ1m、重さも5〜7kgと持ち運びしやすく、価格帯も2〜3万円からと財布にやさしいのが魅力です。
一方で低音域と高音域がばっさり削られているため、クラシック曲をすべて原曲どおりに弾くのは難しくなります。
「家でポップスを弾いてみたい」「まずは鍵盤に触れてみたい」という方におすすめのサイズです。
- メリット:軽量・省スペース・価格が安い(¥20,000〜)
- デメリット:低音と高音がカットされるので本格クラシックには不足
- おすすめ:ポップス中心の趣味/自宅で肩慣らし/持ち運びたい人
73〜76鍵 – あと一歩”が欲しい大人の趣味サイズ

73鍵や76鍵は、61鍵で物足りなくなった人がもう少し音域を広げたいときに選ばれます。
追加された1オクターブでジャズのウォーキングベースや左手アルペジオにも対応できるようになり、弾ける曲の種類が広がります。
重さも10kg前後に収まるモデルがおおく、家に置くのにちょうど良いと感じるサイズでもあります。
- メリット:中・上級曲でも約90 %はカバー。88鍵より4〜6kg軽いモデルが多い
- デメリット:端の1オクターブを使う曲では移調やオクターブシフトが必要
- おすすめ:ジャズ・ポップス主体/ステージ持ち出し/自宅のスペースが限られる人
88鍵 – 現代のピアノのスタンダード

グランドピアノ等のアコースティックピアノと同じ音域をそっくり搭載したのが88鍵モデルです。
ピアノ教本やコンクール課題は88鍵で書かれているため、「グランドピアノでの演奏を目指したい」「子どもに本格的に習わせたい」という場合は最初から88鍵を選ぶことで余計な買い替えを防げます。
最近はスリムボディや軽量モデルも登場し、賃貸のお家でも導入しやすくなりました。
- 現代のピアノのスタンダードタイプ
- J-POPもクラシックも教本も、88鍵を前提に楽譜が作成されています。
- タッチ・音域・ペダル位置もアコースティックピアノと同じ → レッスンに最適
90鍵以上の拡張ピアノ(番外編)

ベーゼンドルファーの97鍵モデルやステュアート&サンズの102鍵など、ごく一部のコンサートグランドで超低音や超高音を追加した特別仕様のピアノがあります。
特殊レパートリーや映画音楽で使われる程度なので、一般購入ではほぼ無縁です。
あくまで「こんな世界もあるんだ」という雑学として覚えておくと楽しいです。
おすすめ鍵盤数(初心者・趣味ユーザー向け)

クラシックの名曲を原曲どおりに弾きたいなら88鍵が安心です。
一方で、J‑POPやアニメソングの初級アレンジでは61鍵でも収まる曲もありますが、中級以上のアレンジとなると73鍵〜88鍵が必要な場合も多いです。
ジャズや映画音楽は左手低音をしっかり使うので73〜76鍵があるとベースラインに余裕が生まれます。
弾きたい曲ジャンル別に必要な鍵盤数をチェック

大まかに分けて、それぞれのジャンルで下記の鍵盤数が必要です。
音域が足りない場合は、アレンジして対応する必要があり、原曲通りに弾けなくなってしまう点は知っておきましょう。
- クラシック(ショパン/リストなど):88鍵必須
- ポップス・J-POP:61鍵で弾ける曲も多数/本格演奏なら76鍵以上が安心
- ゲーム・アニメ楽曲:73鍵以上でほぼカバー
- ジャズ・即興:左手ウォーキングベースで低音を使う=76鍵以上推奨
迷ったら最初から88鍵がおトク?-買い替えコストを計算

「とりあえず安い61鍵を買って、上達したら買い替えよう」と考える人は多いですが、後から88鍵へ移行すると総額で10万円を超えてしまうことも…
最初から88鍵を選んでおけば、タッチに慣れる時間も費用も節約できますので、スペースや持ち運びの問題がなければ、最初から88鍵を選んだ方が無難です。
鍵盤数で失敗しないコツ
教本の音域を先回りして確認する

初級教本は61鍵でも対応可能な範囲でスタートしますが、ブルグミュラーやソナチネに進む頃には低音・高音が登場します。
61鍵ではどうしても足りなくなるため、お子さんが本格的に続ける意欲があるかどうかを見極めて、早めに88鍵に移行するのがベターです。
防音・省スペースで選ぶ電子ピアノの鍵盤数

最近の88鍵電子ピアノは、奥行き25cmほどのスリム設計に加え、ヘッドホン端子が標準装備なので、夜の練習やマンション等でも音の悩みなしで使えます。
スリムなモデルが増えているので、スペースが理由で61鍵を検討していた人も一度チェックしてみてください。
ピアノが88鍵に落ち着くまでの歴史
はじまりは54鍵 – バッハの頃のピアノ

1700年ごろ、クリストフォリが生み出した最初期のピアノは54鍵(4オクターブ半)しかありませんでした。
バッハやヘンデルの鍵盤曲は、この限られた音域で生まれました。
ロマン派とともに広がる音域 – 低音ブームの始まり

産業革命で鋳鉄フレームが導入され、ピアノは低音をもっと響かせたいという作曲家の夢を追うようになります。
ベートーヴェン晩年のソナタでは、新しい低音鍵盤が楽譜に書かれるたびにメーカーが音域を拡張し、演奏家は最新モデルを求めて走り回っていたといわれます。
スタインウェイが決めた「88鍵」の業界標準

1880年代、スタインウェイ社がA0からC8までの88鍵を量産開始しました。
音色バランスと構造強度のバランスが絶妙だったため、以降、ほぼ全メーカーが追随し一気に業界標準となり、国際コンクールでも“基準仕様”となりました。
現在の国際コンクールも88鍵を前提に運営されています。
97鍵・102鍵など“超ワイドレンジ”モデル
ベーゼンドルファー97鍵やステュアート&サンズ102鍵など、現代でも“さらに深い低音・高音”を追う小規模な試みは続いています。
とはいえ、ホールの受け入れ体制や調律コストを考えると、88鍵が“ちょうど良い”という結論に変わりはなさそうです。
よくある質問
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Q1. 88鍵がないとクラシック曲は弾けない?
モーツァルトやハイドンなど古典派の曲であれば、76鍵でも十分演奏できます。ただしリストやドビュッシーの後期作品など音域を端まで使う曲は、やはり88鍵が必要になります。
Q2. 61鍵を後から拡張する方法はありますか?
分割タイプのMIDI鍵盤等は、鍵盤を追加して88鍵相当のレンジを作ることは可能ですが、通常の61鍵の電子ピアノは拡張することはできません。
Q3. 鍵盤数が多いと難易度も上がる?
いいえ。難易度は鍵盤の数ではなく、楽譜の難易度によります。
あなたに最適な鍵盤数?
迷ったら「将来を見据えた88鍵」がおすすめです。
ただし「自宅スペースが狭い」「趣味で軽く弾きたい」なら61鍵〜76鍵でも問題ありません。
ぜひこのページを参考に、あなたのライフスタイルに合ったピアノの鍵盤数を選んでください。