ダイアトニックコードとは、その調で使える7つのコードのことです。曲に出てくるコードは、たいていこの7つに収まっています。
説明より先に、耳で確かめてください。下のツールの「この調で使えるコード」の7つを、左から順に押してみましょう。
※音が出ない場合は、消音モードを解除して読み込み直してください。
- キーを選ぶ
上段が♯系、下段が♭系です。選ぶと、その調の7つのコードに書き換わります。 - 7つのボタンを押す
押すたびに小節へ入り、鍵盤に押さえ方が出ます。小さい数字(Ⅰ・ⅱ・ⅲ…)が度数です。 - 再生する
並べた順に鳴ります。テンポも変えられます。
7つを順番に鳴らすと、どれも違和感なくつながるのが分かるはずです。同じ7つの音だけで作られているからです。
「この曲、次にどのコードを置けばいいんだろう」——コードを覚え始めたときに、必ずぶつかる壁です。108個のコードから選ぶのではなく、7つから選ぶ。そう考えられるようになると、伴奏づけも作曲もぐっと現実的になります。
この記事では、ダイアトニックコードのしくみと全12キーの一覧、そして実際に7つを並べてコード進行を作る手順まで、音を鳴らしながら確かめられるようにしました。
ダイアトニックコードとは?
ダイアトニックコードとは、その調の音階の音だけを使って作った和音のことです。
ハ長調の音階は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音。この7音それぞれを土台にして、1つ飛ばしで3つ積むと、7つのコードができあがります。
たとえばドから始めるなら、ド → (レを飛ばして)ミ → (ファを飛ばして)ソ。これで「ド・ミ・ソ」=C です。次はレから始めて「レ・ファ・ラ」=Dm。黒鍵は1つも使いません。
| 度数 | コード | 構成音 | ドレミ |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | C | C・E・G | ド・ミ・ソ |
| ⅱ | Dm | D・F・A | レ・ファ・ラ |
| ⅲ | Em | E・G・B | ミ・ソ・シ |
| Ⅳ | F | F・A・C | ファ・ラ・ド |
| Ⅴ | G | G・B・D | ソ・シ・レ |
| ⅵ | Am | A・C・E | ラ・ド・ミ |
| ⅶ° | Bdim | B・D・F | シ・レ・ファ |
7番目の Bdim だけは少し不安定な響きで、実際の曲ではあまり単体で出てきません。まずは6つ覚えれば十分です。
なぜ7つに絞れるのか
曲には「調(キー)」があり、その調で使う音はあらかじめ決まっています。ハ長調なら白鍵の7音です。
使う音が決まっているなら、その音から作れる和音も自動的に決まります。だから7つしかないのです。
もちろん、この7つ以外を使ってはいけないわけではありません。ただ、7つの外に出た瞬間、耳は「何かが変わった」と感じます。転調や借用和音と呼ばれるものの正体はこれです。
全12キーのダイアトニックコード一覧
12のキーすべてを並べました。上6行が♯系、下6行が♭系です。
| 調 | Ⅰ | ⅱ | ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | ⅵ | ⅶ° |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ハ長調(C) | C | Dm | Em | F | G | Am | Bdim |
| ト長調(G) | G | Am | Bm | C | D | Em | F♯dim |
| ニ長調(D) | D | Em | F♯m | G | A | Bm | C♯dim |
| イ長調(A) | A | Bm | C♯m | D | E | F♯m | G♯dim |
| ホ長調(E) | E | F♯m | G♯m | A | B | C♯m | D♯dim |
| ロ長調(B) | B | C♯m | D♯m | E | F♯ | G♯m | A♯dim |
| 変ト長調(G♭) | G♭ | A♭m | B♭m | C♭ | D♭ | E♭m | Fdim |
| 変ニ長調(D♭) | D♭ | E♭m | Fm | G♭ | A♭ | B♭m | Cdim |
| 変イ長調(A♭) | A♭ | B♭m | Cm | D♭ | E♭ | Fm | Gdim |
| 変ホ長調(E♭) | E♭ | Fm | Gm | A♭ | B♭ | Cm | Ddim |
| 変ロ長調(B♭) | B♭ | Cm | Dm | E♭ | F | Gm | Adim |
| ヘ長調(F) | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Edim |
数が多く見えますが、覚える必要はありません。上のツールでキーを押せば、その場で7つが出ます。
それより大事なのは、どのキーでも並び方が同じだと気づくことです。1・4・5番目がメジャー、2・3・6番目がマイナー、7番目がdim。これはすべてのキーで変わりません。
度数(ローマ数字)で覚える
並び方が同じなら、コード名ではなく順番で覚えたほうが得です。そのための書き方が度数(ローマ数字)です。
| 度数 | 種類 | ハ長調 | ト長調 | 変ホ長調 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | メジャー | C | G | E♭ |
| ⅱ | マイナー | Dm | Am | Fm |
| ⅲ | マイナー | Em | Bm | Gm |
| Ⅳ | メジャー | F | C | A♭ |
| Ⅴ | メジャー | G | D | B♭ |
| ⅵ | マイナー | Am | Em | Cm |
| ⅶ° | ディミニッシュ | Bdim | F♯dim | Ddim |
大文字がメジャー、小文字がマイナーを表します。この書き方なら、キーが変わっても同じ表記が使えます。
たとえば「Ⅰ→Ⅴ→ⅵ→Ⅳ」という進行は、ハ長調なら C→G→Am→F、ト長調なら G→D→Em→C。形は同じで、場所だけが動きます。
上のツールでキーを切り替えると、置いてあるコードもそのまま移調されます。度数の関係が変わらないことを、耳で確かめてみてください。
7つには、3つのはたらきがある
7つのコードは、役割で3つのグループに分けられます。ここが分かると、並べる順番が自分で決められるようになります。
| はたらき | コード(ハ長調) | 感じ |
|---|---|---|
| トニック(家) | Ⅰ・ⅲ・ⅵ C・Em・Am | 落ち着く。始まりと終わりに置く |
| サブドミナント(外出) | Ⅳ・ⅱ F・Dm | ふわっと離れる。動きが出る |
| ドミナント(帰り道) | Ⅴ・ⅶ° G・Bdim | 強く引っぱる。家に帰りたくなる |
トニック → サブドミナント → ドミナント → トニック。これがいちばん基本的な流れです。ハ長調なら C→F→G→C。
▶ を押すと C→F→G→C(Ⅰ–Ⅳ–Ⅴ–Ⅰ)が鳴ります。
最後の C に戻った瞬間、ちゃんと終わった感じがするはずです。この「帰ってきた感じ」を作るのが、ドミナント(G)の仕事です。
ダイアトニックコードでコード進行を作る
7つを知ったら、あとは並べるだけです。難しく考える必要はありません。
手順1 Ⅰから始めて、Ⅰで終わる
まず4小節で考えます。1小節目と4小節目を Ⅰ(ハ長調なら C)にしてください。これだけで「ひとまとまり」になります。
手順2 3小節目に Ⅴ を置く
終わる直前に Ⅴ(G)を置くと、最後の Ⅰ への戻りが強くなります。Ⅰ・?・Ⅴ・Ⅰ の形ができました。
手順3 2小節目は好きなものを入れる
残った2小節目に、ⅵ(Am)やⅣ(F)やⅱ(Dm)を入れてみてください。ここを変えるだけで、曲の表情が変わります。
2小節目に ⅵ(Am)を入れた形。少し切なくなります。
2小節目を Ⅳ(F)にすると、もう少し明るく開けた感じになります。
同じ Ⅰ–Ⅳ–Ⅴ–Ⅰ をアルペジオで。伴奏らしくなります。
上のツールで、2小節目を押してから別のコードに差し替えてみてください。1つ変えるだけで印象が動くのが分かります。
定番の進行も、全部この7つの中にある
よく知られたコード進行を度数で書くと、こうなります。
| 進行 | 度数 | ハ長調では |
|---|---|---|
| カノン進行 | Ⅰ–Ⅴ–ⅵ–ⅲ–Ⅳ–Ⅰ–Ⅳ–Ⅴ | C→G→Am→Em→F→C→F→G |
| 王道進行 | Ⅳ–Ⅴ–ⅲ–ⅵ | F→G→Em→Am |
| 小室進行 | ⅵ–Ⅳ–Ⅴ–Ⅰ | Am→F→G→C |
| 循環コード | Ⅰ–ⅵ–ⅱ–Ⅴ | C→Am→Dm→G |
つまり、7つを知っていれば定番進行はすべて作れます。それぞれの詳しい解説は、ピアノのコード進行とは?定番5パターンを一覧表と音で解説にまとめてあります。
セブンスのダイアトニックコード
3つ積んだところに、もう1つ1つ飛ばしで音を足すと、七の和音(セブンス)になります。ジャズやおしゃれな曲でよく使われる響きです。
| 度数 | コード(ハ長調) | はたらき |
|---|---|---|
| Ⅰmaj7 | CM7 | トニック |
| ⅱm7 | Dm7 | サブドミナント |
| ⅲm7 | Em7 | トニック |
| Ⅳmaj7 | FM7 | サブドミナント |
| Ⅴ7 | G7 | ドミナント |
| ⅵm7 | Am7 | トニック |
| ⅶm7♭5 | Bm7♭5 | ドミナント |
注目してほしいのは Ⅴ だけが「7」(G7)になることです。ほかは M7 か m7 なのに、5番目だけ違います。
この G7 が、いちばん強く Ⅰ へ引っぱる和音です。ジャズの定番「ツーファイブワン」(Dm7→G7→CM7)も、ここから来ています。
三和音を七の和音に置き換えた形(CM7→FM7→G7→CM7)。
三和音の C→F→G→C と聴き比べると、同じ進行でもぐっと大人びた響きになります。上のツールの「コードを選ぶ」から M7・m7・7 を選べば、自分でも作れます。
ツーファイブについては、ツーファイブ(Ⅱ–Ⅴ–Ⅰ)の解説もあわせてどうぞ。
短調(マイナーキー)のダイアトニックコード
短調にもダイアトニックコードがあります。ただし、覚え直す必要はありません。
イ短調で使う音は「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ」。これはハ長調とまったく同じ7音です(平行調といいます)。ということは、できあがる7つのコードも同じになります。
違うのはどれを「家」と感じるかだけです。ハ長調では C が家ですが、イ短調では Am が家になります。
| 家(トニック) | 7つのコード | |
|---|---|---|
| ハ長調 | C | C・Dm・Em・F・G・Am・Bdim |
| イ短調 | Am | Am・Bdim・C・Dm・Em・F・G |
そのため、ツールでイ短調を扱いたいときは平行調のハ長調を選んで、Am から並べればそのまま使えます。
ただし実際の曲では、ドミナントを強くするために Em を E(または E7)に変えることがよくあります。ソをソ♯に上げる操作で、和声的短音階と呼ばれるものです。この E は7つの外にありますが、短調ではごく普通に使われます。
どのキーとどの短調が対になるかは、全調スケール一覧表で確認できます。
よくある質問
ダイアトニックコードとは何ですか?
その調の音階の音だけを使って作った7つの和音のことです。ハ長調なら白鍵だけで作れる C・Dm・Em・F・G・Am・Bdim の7つを指します。曲で使われるコードの大半がこの中に収まります。
7つ全部覚えないとダメですか?
いいえ。Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ・ⅵ の4つ(ハ長調なら C・F・G・Am)で、ポップスの多くが弾けます。ⅶ°(Bdim)は単体ではほとんど使われないので、最後で構いません。
ダイアトニックコード以外を使ってはいけないの?
使えます。7つの外のコードは借用和音やセカンダリードミナントと呼ばれ、曲に変化をつけるために使われます。
ただし順番としては、まず7つの中だけで曲が作れるようになってからです。基準がないと、外れたことに気づけません。
キーが分からないときはどうすればいい?
楽譜の調号(♯や♭の数)を見れば分かります。♯が1つならト長調、♭が1つならヘ長調、といった具合です。判別のしかたは五度圏の覚え方と使い方で解説しています。
なぜ2・3・6番目はマイナーになるのですか?
音階の音の間隔が均等ではないからです。ドとレの間は全音ですが、ミとファの間は半音しかありません。この差のせいで、積み上がる和音の形が変わります。
結果として、どのキーでも「1・4・5がメジャー、2・3・6がマイナー、7がdim」という並びになります。覚えるのはこの並びだけで足ります。
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まとめ
- その調で使うコードは7つだけ。ハ長調なら白鍵で作れる7つ
- 並び方はどのキーも同じ。1・4・5がメジャー、2・3・6がマイナー、7がdim
- だから度数(Ⅰ・ⅱ・ⅲ…)で覚える。キーが変わっても形は同じ
- 並べるコツは Ⅰで始めてⅠで終わり、直前にⅤ
- 短調は平行調と同じ7つ。家がどこかが違うだけ
コードを1つずつ覚えるより、7つのまとまりで覚えるほうが、はるかに早く曲になります。
上のツールは保存せずに何度でも試せます。7つのボタンを適当に押して、気に入った並びが見つかったら、共有ボタンでURLを控えておいてください。
