サークル・オブ・フィフス(Circle of Fifths)は、調性を表す円盤状の図のことで、日本語では「五度圏」「五度圏図」と呼ばれています。
ただ、図をながめているだけでは「で、これをどう使うの?」で止まってしまいがちです。
そこで、触れて、音が鳴る五度圏を作りました。調を選ぶと、その調で使う和音が円の上で光ります。カノン進行や小室進行を、実際のピアノの音で聴くこともできます。
※音が出ない場合は、消音モードを解除して読み込み直してください。
カノン進行や小室進行などのコード進行が五度圏のどこを動いているかは、こちらで解説しています。
五度圏の使い方
- 調を選ぶ
外側の輪が長調、内側の輪がその平行調(短調)です。押すと主和音が鳴ります。 - 光った3列を見る
選んだ調で使う和音に I・ii・iii・IV・V・vi・vii° の印が付きます。円の3列ぶんに収まっているのが分かります。 - コード進行を鳴らす
下のボタンでカノン進行などを再生すると、円の上を光が移動します。調を変えれば、そのまま移調されます。
「調号を表示」を押すと、12の調それぞれの調号(♯や♭の数)が五線で表示されます。ト音記号とヘ音記号を切り替えられます。
五度圏図とは?
五度圏図(Circle of Fifths)は、音楽における調の関係性を視覚的に示した図です。
調とは曲のなかでの大まかな音階のシステムを意味しますが、五度圏図を使うと、調の近さや変化について視覚的に理解することができます。
五度圏図の構造
五度圏図は、一般的に下記のような構造になっています。
- 円の上部に、シャープもフラットもないC調が位置している。
- 右回りにはシャープ数が増える調がならび、左回りにはフラット数が増える調がならんでいる。
- メジャー調の内側に、その平行調であるマイナー調が配置されている。
なぜ「5度」なのか?
五度圏図の「五度」 とは、音楽理論における 完全五度(Perfect Fifth) を意味します。
音階上で、ある音から5番目の音(度数)までの間隔のことを指します。この「五度」を基準に音を並べた結果が五度圏図です。
五度の関係は、音楽理論上もっとも安定した響きを持つ間隔の一つです。この特性を利用して、自然で調和の取れた転調や和音の進行が可能になります。
この完全五度を1つずつたどっていく5度進行は、それ自体がひとつのコード進行として使われます。五度圏を鍵盤で体感したい方は、こちらもどうぞ。
五度圏の覚え方【語呂合わせつき】
五度圏は「丸暗記するもの」だと思われがちですが、実は覚えるべきことは3つだけです。
覚え方① 調号の数=時計の位置
いちばん簡単なのがこれです。時計の文字盤だと思ってください。
- 右回りに1時=♯1つ、2時=♯2つ、3時=♯3つ……
- 左回りに11時=♭1つ、10時=♭2つ、9時=♭3つ……
ト長調(G)は1時の位置なので♯が1つ、ニ長調(D)は2時なので♯が2つ。位置がそのまま個数です。覚えることはありません。
覚え方② ♯と♭の順番は「逆から読むだけ」
調号が付く音には決まった順番があります。
| 付く順番 | |
|---|---|
| ♯ | ファ → ド → ソ → レ → ラ → ミ → シ |
| ♭ | シ → ミ → ラ → レ → ソ → ド → ファ |
語呂合わせとしては、♯の順を「ファドソレラミシ」とひとかたまりのリズムで唱えるのが定番です。7音を一息で言えるようになれば十分です。
そして、ここが五度圏の面白いところなのですが、この順番自体が五度圏をたどっているだけです。
- ファ → ド → ソ → レ …… は、完全五度ずつ上がる並び(=五度圏の右回り)
- シ → ミ → ラ → レ …… は、完全五度ずつ下がる並び(=五度圏の左回り)
つまり、五度圏さえ頭に入っていれば、調号の順番は別に覚える必要がありません。同じものを見ているだけだからです。
覚え方③ 調号から調名を言い当てる
楽譜を開いて調号を見たとき、その場で調名を出すルールです。
♯のとき:いちばん右の♯の、半音上が調名
♯が3つ(ファ・ド・ソ)なら、いちばん右はソ♯。その半音上はラ。→ イ長調(A)
♭のとき:右から2番目の♭が、そのまま調名
♭が4つ(シ・ミ・ラ・レ)なら、右から2番目はラ♭。→ 変イ長調(A♭)
※ ♭が1つだけのときは2番目がないので、ヘ長調(F)と覚えてしまってください。例外はこれだけです。
短調を知りたいときは、そこから3つ下の音(短3度下)が平行調の主音です。上のツールなら、内側の輪にそのまま書いてあります。
その調で使う和音が、円の3列に収まっている
五度圏がいちばん役に立つのは、実はここです。ところが、静止画の図だけでは伝わりにくい部分でもあります。
上のツールでハ長調を選ぶと、こう光ります。
| 円での位置 | 左どなり | 選んだ調 | 右どなり |
|---|---|---|---|
| 外側(長調) | F IV | C I | G V |
| 内側(短調) | Dm ii | Am vi | Em iii |
つまり、その調でよく使う和音は、円の「3列ぶんの窓」にすべて入っています。
そして、どの調に動かしても窓ごとスライドするだけです。ト長調を選べば窓はC・G・Dに、変ホ長調を選べばA♭・E♭・B♭に移ります。関係はまったく同じです。
ここまで分かると、次のことが見えてきます。
- コードが思いつかないときは、窓の6つから選べばまず外れません
- 移調したいときは、窓ごと横にずらせば済みます
- 窓の外の和音が出てきたら、そこが転調か借用和音の合図です
この「窓の中の7つ」には名前があります。ダイアトニックコードです。
五度圏では位置の関係として見えますが、同じものを鍵盤に置き換えて1つずつ鳴らすと、また違った形で身につきます。「Ⅰ・ⅱ・ⅲ…」という度数の読み方や、7つを並べてコード進行を作る手順は、次の記事にまとめました。
有名なコード進行も、全部この窓の中にある
日本のポップスでよく使われる進行を、ハ長調で並べてみます。
| 進行 | 度数 | ハ長調では |
|---|---|---|
| カノン進行 | I–V–vi–iii–IV–I–IV–V | C→G→Am→Em→F→C→F→G |
| 王道進行 | IV–V–iii–vi | F→G→Em→Am |
| 小室進行 | vi–IV–V–I | Am→F→G→C |
| ツーファイブワン | ii–V–I | Dm→G→C |
| 循環コード | I–vi–ii–V | C→Am→Dm→G |
どれも、さきほどの3列の窓から一歩も外に出ていません。
上のツールでこれらを再生すると、円の上を光が行ったり来たりします。「なぜこの進行が気持ちよく聞こえるのか」が、耳と目の両方で分かるはずです。
- カノン進行の詳しい解説
- 王道進行の詳しい解説
- 小室進行の詳しい解説
- ツーファイブ(Ⅱ–Ⅴ–Ⅰ)の詳しい解説
- ピアノのコード進行まとめ
調性と転調の仕組み

調の近親性
調の中で、音階が多く重複している調を「近親調」と呼びます。例えば、C調から見ると、隣のG調やF調が近親調となります。
近親性が高い調ほど、音楽の流れが自然で調和が取れた転調が可能になります。
五度圏図を使うとこれらを視覚化して理解できるため、流れの自然な転調にも役立ちます。
調の近親性の考え方
調の近親性は、主に以下の3つの調に着目して考えます。
(1) 平行調(Relative Key)
- メジャー調とマイナー調で、同じ音階を共有する調。
- 例: Cメジャー(ハ長調)とAマイナー(イ短調)は平行調で、どちらもシャープやフラットを含まない音階を持ちます。
(2) 属調(Dominant Key)
- 元の調の主音(ド)から完全五度上の音を主音とする調。
- 例: Cメジャーの属調はGメジャー(ト長調)。
- 属調は音階の中で唯一、主和音に次いで重要な役割を持つ和音(属和音)を基盤にしています。
(3) 下属調(Subdominant Key)
- 元の調の主音(ド)から完全五度下(または完全四度上)の音を主音とする調。
- 例: Cメジャーの下属調はFメジャー(ヘ長調)。
これらの近親調は、五度圏図で隣り合う位置に配置されています。
転調とは

転調は、楽曲中で調を変更する技法です。近親調への転調は自然で、聞き手に違和感を与えません。
一方、遠隔調(遠い調)への転調は、意外性や劇的な効果をもたらします。
近親性を考慮した転調の例
(1) 平行調への転調
- 特徴:同じ音階を使うため、最もスムーズな転調方法。
- 例:CメジャーからAマイナーへの転調。
和音の選択を少し変更するだけで、自然な転調が可能。
(2) 属調・下属調への転調
- 特徴:音階に1つ新しいシャープやフラットを加えるだけで転調できる。
- 例:CメジャーからGメジャー(属調)やFメジャー(下属調)への転調。
五度圏図で隣り合う調のため、調和が取れた進行になる。
(3) 遠隔調への転調
- 特徴:調性が大きく変化するため、聴覚的に劇的な効果をもたらす。
- 例:CメジャーからEメジャーへの転調。
中間に属調や平行調を挟むことで、スムーズさを保ちながら劇的な転調が可能。
転調における五度圏図の活用
五度圏図を見ると、隣接する調(近親調)や遠隔調の関係が一目でわかります。
- 近親調: 五度圏図で隣り合う調。スムーズな転調に最適。
- 遠隔調: 五度圏図で反対側に位置する調。意外性のある転調を作りたいときに使います。
上のツールで、いま選んでいる調と反対側の調を押してみてください。調号の数が一気に増えるのが分かります。これが「遠い調」の正体です。
五度圏図の活用方法
五度圏図は、単なる理論のツールにとどまらず、実際に下記のように活用することができます。
練習に役立つ

スケールやコード練習の順番を五度圏に従って進めることで、すべての調を効率よく習得できます。
例えば、メジャースケールやマイナースケールを五度圏の順に練習することで、指使いや音階の関係性が自然に身につきます。
各調のスケールは、こちらにまとめてあります。
作曲や即興演奏に

作曲や即興演奏の際、近親調を使った転調をスムーズに行うためのガイドとして役立ちます。
近親調を使うことで、音楽の流れが自然で調和の取れたものになります。
ポップスやクラシック音楽
平行調や属調を使う転調が一般的。
メロディが同じ雰囲気を保ちつつ、調和が感じられます。
ジャズや現代音楽
遠隔調を大胆に使った転調で、意外性を生みます。
コード進行の理解

五度圏は、ポピュラー音楽やジャズでよく使われる循環コード(I–vi–ii–V)やツーファイブ(ii–V–I)の理解を深める助けになります。
どちらも五度圏の上では、左どなりへ動いてから戻ってくる形になります。ツーファイブ(Dm→G→C)を円の上でたどると、内側のDm、外側のG、外側のCと、きれいに順番に並んでいるのが分かります。
コードの押さえ方そのものは、こちらにまとめてあります。
よくある質問
Q1. 五度圏は暗記しないといけませんか?
A. 暗記は要りません。調号の数=時計の位置という関係さえ押さえておけば、あとはその場で数えられます。
作曲や編曲を仕事にするのでなければ、必要なときに見られる状態で十分です。上のツールをブックマークしておいてください。
Q2. 外側と内側、どちらから覚えるべき?
A. 外側(長調)だけで十分です。内側の短調は、外側と同じ調号を共有しているだけなので、あとから自動的についてきます。
Q3. F♯とG♭のように2つ書いてあるのはなぜ?
A. 鳴る音は同じで、楽譜での書き方だけが違うからです(異名同音)。
嬰ヘ長調(F♯)は♯が6つ、変ト長調(G♭)は♭が6つ。ピアノで押す鍵盤はまったく同じです。曲の流れによって、読みやすいほうが選ばれます。
Q4. 五度圏を覚えると、何ができるようになりますか?
A. 実用としては、次の3つが大きいです。
- 移調ができる(カラオケでキーを変えるのと同じことを、楽譜でできる)
- 伴奏のコードを推測できる(メロディの調が分かれば、使う和音の候補が6つに絞れる)
- 転調に気づける(窓の外の和音が出てきたら、そこが転換点)
あわせて使いたい無料ツール
- バーチャルピアノ……ブラウザで鍵盤を鳴らせます。和音を実際に押して確かめたいときに
- 譜読みトレーニング……ト音記号・ヘ音記号の読み方を練習できます
- リズムトレーニング……音符の長さを叩いて覚えます
- オンラインメトロノーム……曲別の練習テンポつき
- 全調スケール一覧……12の調すべての音階と指づかい
まとめ
- 調号の数=時計の位置。右回りが♯、左回りが♭
- ♭の順番は♯の逆から読むだけ。どちらも五度圏をたどっている
- その調で使う和音は円の3列の窓にすべて収まっている
- 有名なコード進行は、どれもその窓の中を動いている
- 近い調=隣どうし、遠い調=反対側。転調のしやすさが距離で分かる
五度圏図は、音楽理論を理解し、実践するための強力なツールです。
初心者でも扱いやすく、スケール練習、作曲、即興演奏、転調といったさまざまな場面で活用できます。
調の近親性を理解して五度圏図を活用することで、音楽の幅が広がり、より深い表現力を身につけることができるので、ぜひ音楽をさらに楽しんでください!
